1998年のバラエティー
今週のお題「おうち時間2021」
今年はガマンのゴールデンウイークなので、どこにも遊びにいかず、家でガラクタの整理をしておったら、1本のビデオテープが出てきた。
ラベルには「P・その他」と書かれてあった。筆跡から兄の字である。
「ははあん。これはピンク映画かポルノの『P』だな。しょうがない兄だ」と言いつつ、ビデオデッキに入れて再生すると、画面には笑福亭鶴瓶と上岡龍太郎がやっていたトーク番組「パペポTV」が映し出された。
「なんやねん。がっかり」と肩をおとしつつも、まあこれはこれで面白いかもと見始めると、案の定、おもしろかった。
時は1998年初旬。当時、公開されて大ヒットしていた映画「タイタニック」について、2人が語っていた。
上岡「あれはあのババアのウソ話なんです」(笑)
鶴瓶「ババア!?」
上岡「どこに証拠があんねん。おまえが好き放題言うとるだけや。そんなウソ話に3時間つきあわすな! それに大したウソ話やない。ウソ話なら、君の方がずっとおもろい!」(笑)
鶴瓶「・・ウソ話!?」
上岡「せやから、タイタニックに乗った鶴瓶とさんまの方がずっとおもろい!」(笑)
鶴瓶「人の話をようそんな・・」
自分は昔、この映画でずいぶん感動した記憶があるのだが・・。「そうか。実話じゃなかったのか・・。あの日の涙を返せ」とディカプリオに詰め寄りたくなった。ちなみに「タイタニック」(日本語タイトル『ババアのウソ話』)は今週、金曜ロードショーで放送するんで、未見の方はぜひこの機会に。
「パペポ」の後に入っていたのが、「FNS番組対抗!春の祭典スペシャル」だった。これは1998年4月に放送された、フジテレビの番組祭りである。びっくりしたことに、ビートたけしが司会ではなく、「アンビリバボーチーム」で出演しておった。(まあチームと言っても一人だけなのだが)
で、1コーナーの司会でタモリが登場したのだが、たけしとのやりとりが非常に面白かった。
タモリ「奇跡体験アンビリバボーって、あんたの人生?」(笑)
(中略)
タモリ「アンビリバボーにあんた出てた?」(笑)
たけし「あんただって、昔、いいかげんなことやってただろ! アタマと尻出て、中身出てこねーで! 『太陽にほえろ』の石原裕次郎みたいなやり方しやがって! それと同じ!」(笑)
・・というやりとりがあったり、また、たけしが1度出した「5番」という答えをこっそり、「2番」に変えて・・。
タモリ「あんた、さっき『5番』だったじゃないか」(笑)
たけし「なにいってんの。あっ、さっきはこうしてたから、『2』が『5』に見えたんだ」(笑)
タモリ「どうやったら、こう刺さるんだ!」(笑)
・・という、やりとりがあったりと。とにかく、さんまのいない場で、タモリとたけしが、丁々発止のトークを繰り広げるのは非常に珍しく、実にレアな映像であった。
その後、マッスル(当時人気だった外国人タレント)が登場し、2人をこんなふうにいじっていた。
マッスル「今日はすごいメンバーだなあ。お前以外はな、タモリ」(笑)
タモリ「・・・・」
(中略)
マッスル「やあ、たけし。ベネチア映画祭グランプリおめでとう!」
たけし「どうも」
マッスル「『HANA-BI』観させてもらったよ。いや~、笑った。笑った。90分間、笑いっぱなしだったよ。またあんな爆笑映画を撮ってくれよな」(笑)
たけし「バカヤロー!」(笑)
どんな大御所に対しても、ひるむことなく、ガンガンいじっていく、その姿勢は、さしずめ、「20世紀のフワちゃん」と言ったところだろうか。(まあ、マッスルはただ、ディレクターの指示通りに動いてるだけなんで、ぜんぜん違うかもしれんが・・)
マッスルが言っていたように、当時、たけしは前年秋にベネチアで快挙を成し遂げ、一躍、日本中が「たけしフィーバー」に沸いたのだった。1月に公開された同作もヒットし、また、ダウンタウンの松ちゃんとの対談が話題になった本「コマネチ!」も50万部のベストセラーになり、この頃のたけしはタレントとして、とても脂がのっていた。
たけしの年表(20世紀まで)をざっくり書くとこんな感じである。
漫才ブームで人気(80年)→フライデー襲撃で逮捕(86年)→映画監督進出(89年)→バイク事故で重傷(94年)→ベネチア映画祭グランプリ(97年)
こんなに起伏の激しいタレントは他にいないのではないか。
タモリが放った「奇跡体験アンビリバボーって、あんたの人生?」というセリフは、本当にうまいこと言うものである。これこそ「言いえて妙」というやつであろう。
「春の祭典」の後に入っていたのが「号外!!爆笑大問題」であった。これは爆笑問題が深夜にやっていたニュースバラエティである。
ビデオに残っていたのは1998年の8月に放送された「札幌での公開収録の回」であった。
以下、太田光のコラム。
太田「札幌に来ました。空港に着いた時、言葉の微妙なニュアンスが気になりました。『ようこそ。いらっしゃいましたポロ~』」(笑)
(田中「そんな語尾つけるか!」)
太田「『東京は暑いでしょポロ~』」(笑)
(田中「藤子不二雄の漫画じゃねえんだ!」)
(中略)
太田「今日はせっかく北海道にいるので、私などではなく、この人にコラムをやってもらおうと思います。・・・・・。どうも。五郎です」(笑)
(田中「似てねー!」)
太田「お、俺は、普段、富良野にいるんだけど、急にコラムやれって言われて、札幌に来たんだけど・・、いやあ、まいったなあ」(笑)
(田中「なにやってんだ一人で!」)
書く必要もないと思うが、五郎というのは「北の国から」で、田中邦衛が演じていた、あの黒板五郎である。芸人が営業先でよくやる「ご当地ネタ」であるが、あまりのバカバカしさに声を出して、笑ってしまった。
爆笑問題は当時33歳。まだ、ゴールデンの司会などはやっていなかったが、これを見ただけで、「ああこの人たちは大ブレークするなあ。きっと将来、冠番組を何本もやることになるんだろうな」と感じさせるに十分な映像であった。(まあ、結果評論と言われれば、ぐうの音も出ないんすけどね)
3本のバラエティを見終わって感じたのは、面白いものは23年の時を経ても、色あせないんだなあ、時の洗礼を受けたりしないんだなあということだ。
いや~、このビデオのおかげで、ステイホームでありながら、なかなか楽しいゴールデンウィークとなった。
以上、今週のお題「おうち時間1998、・・もとい、2021」でした。