わが社のジャイアン
国民的アニメ「ドラえもん」にジャイアンという、ガキ大将が出てきます。
彼は「正しいのは、いつも俺」と豪語し、気に入らないことがあれば、すぐに暴力で脅しつけます。
ガンジーとは真逆の存在。ジャイアンはまさに「逆バンジー」ならぬ、「逆ガンジー」といっても、過言ではないでしょう。
しかし、ああいう困ったちゃんは、あくまでドラえもんの世界だけで、実際、そんなやつはいないよ、と思っていたのですが・・。
先日のことです。
高校野球の地区予選で、同僚のAさんとBさんの出身校同士が対戦することになりました。
AさんもBさんも、母校愛がとても溢れる人たちで、試合前から「勝つのは、わが校じゃい!」「なにをぬかすか! 勝つのは、ぜったいに、わが校じゃい!」と、バチバチにやりあっていました。
なぜかいっしょに観戦することになった僕は、あんまり考えることなく、かるーい気持ちで「どっちも応援しますよ!」と、二人に言いました。
これが、あとで、どえらいことになろうとは・・。
そのときの自分はまったく気づきませんでした。
「プレイボール!」
球審の掛け声と共に試合が始まりました。
1回表。いきなりAさんの高校にホームランが飛び出しました。
「やったやったー!」と、大喜びするAさん。
そんなAさんに対して、僕は「やりましたね」と声をかけました。
すると、Bさんが「おい! なに肩入れしとんじゃい!」と、怒りました。
「か、肩入れだなんて、ぼ、僕はちゃんと両チームを応援しますよ」と弁明すると、Bさんは、僕の胸ぐらをつかみ、こう怒鳴りました。
「ああん!? 今度、逆なでするようなこと、ぬかしたら、ただじゃおかねえぞ!」
1回裏。今度はBさんの高校が点を取り返しました。
「やったやったー!」と、大喜びするBさん。
そんなBさんに対して、僕は「よかったですね」と声をかけました。
すると、今度はAさんが、「おい! さっきの『やりましたね』は何やったんじゃい!? 俺をだましてたのかあ!?」と、ブチギレました。
「だ、だますだなんて、ぼ、僕は、ただ平等に応援しているだけで・・」と弁明すると、Aさんは、僕の胸ぐらをつかみ、こう怒鳴りました。
「ふざけんな! 今度、俺を裏切ったら、命はないと思え!」
以降、試合は、点を取られたら、取り返す、白熱したシーソーゲームになったのですが、僕はその間、一言も語らず、じーっとしておりました。
まるで、不祥事をおこした野球部のごとく、おとなしくして、すごしました。
わが社には、ジャイアンがいます。しかも二人もです。
未来から、カレがやってくるのを心から待ちわびる、今日この頃です。